3217東京都医学検査 Vol. 53 No. 1543.不規則抗体同定検査4.RhD血液型精査自家製のパネル赤血球を使用特徴:Di(a+)赤血球が2~3例含まれている5:未処理血球(PBS浮遊)4:ficin処理血球(PBS浮遊)3:ficin処理血球(LISS浮遊)2:未処理血球(LISS浮遊)1:洗浄済赤血球沈渣毎朝、使用者が各自で調製不規則抗体同定検査用パネル赤血球図8 2014年4月~2023年12月の間に当血液センターで検出された高頻度抗原に対する抗体は抗Jraが最も多く,全体の63%を占めています。次に検出されるのは抗JMH 12%であり,抗Dib 6%,抗KANNO 5%,抗Ch/Rg 4%,抗Yka 2%,抗Fya 1%,その他7%となっています(図10)。 不規則抗体検査で多く検出される自己抗体と高頻度抗原に対する抗体はどちらもすべてのパネル赤血球と陽性に反応します。両者の鑑別には,患者の自己赤血球との反応を確認することが重要となります。自己抗体と高頻度抗原に対する抗体は検査の進め方が全く異なるため,患者様への輸血が滞りなく実施できるよう,自己赤血球との反応を確認しましょう。 RhD血液型精査の依頼理由は主に2つで,直接凝集法で抗D試薬との反応が陰性または弱陽性の場合と,複数の抗Dとの反応で陽性と陰性の反応がある場合です。前者はweak Dが疑われ,後者はpartial Dが疑われます。weak Dは,赤血球1個当たりのD抗原の量が少ない量的な異常で,D抗原エピトープはすべて存在していると考えられています。そのため,直接凝集法では凝集を吸着除去してから検査を実施する必要があります(図5~7)。 不規則抗体同定検査の依頼理由には,パネル血球との反応が抗原表と一致せず同定不能な場合(単一または複数抗体),すべてのパネル血球と陽性となり同定不能な場合(自己抗体または高頻度抗原に対する抗体),低頻度抗原に対する抗体が疑われる場合等があります。なお,低頻度抗原に対する抗体が疑われる場合には,患者血漿と陽性になった赤血球を一緒に提出していただいています。これは,陽性となった赤血球の低頻度抗原を先に調べる必要があるためです。 実施する検査としては,LISSを用いた抗グロブリン法,酵素法(ficin法37℃),生理食塩液法(37℃,20℃)があり,原則,試験管法で実施しています。酵素法,生理食塩液法は静置法(1~2時間静置後,遠心せずに凝集を確認)で判定しています。必要に応じて,追加検査としてPEGを用いた抗グロブリン法やアルブミン法などを実施する場合もあります。 当血液センターで使用している不規則抗体同定用パネル赤血球は献血者由来の自家製であり,毎朝赤血球沈渣を洗浄して3~5%赤血球浮遊液を調整しています。パネル赤血球の特徴としてはDi(a+)赤血球が3例含まれています。調整する内容は,LISS浮遊の未処理血球,ficin処理血球,PBS浮遊の未処理血球,ficin処理血球をそれぞれ調整して検査に使用しています(図8)。 2023年度に実施した不規則抗体同定検査で最も多く検出されているのは自己抗体関連で52%を占めています。続いて高頻度抗原に対する抗体(まれな血液型)で24%,単一または複数の同種抗体17%となっています。近年では抗CD38抗体治療薬等の抗体医薬投与による影響で同定不能となり依頼される検体も提出されています(図9)。
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