事前準備実際の検査医または整形・リハビリ科医以外は困難なこともあり,検査技師が実施する場合も多い。技師がNCSを行うにあたり,症状やルーチン検査で行った結果から,さらに検査を追加した方がいいか,どこまで踏み込んで検査を進めるべきかはかなり熟練しないと判断が付かないことも多い。また,検査を行う技師が脳神経検査を専門にしていない場合も多いのが現状と思われる。〈必要な情報の収集〉 技師も対象がどのような症状の患者であるのか知っておく必要がある。電子カルテ上でのサマリーの確認,実際に患者と会話しながら症状を聞いていく。・症状が出始めた時期:いつ頃から症状が出現しているかを確認する。症状が出てからすぐに検査をした場合,異常が出現しないこともある。ワーラー変性の最中のことも考えられる。・現在の最も重い症状の場所:手なのか,足なのか,手であれば指先のどの辺りか,上肢全体なのかを確認してみる。・左右差:単神経障害か,多発神経障害を疑うかを確認する。・基礎疾患:糖尿病などの基礎疾患の有無を確認する。〈筋力の確認〉 徒手筋力検査(MMT)で確認するのが最適である。以下のスコアで評価する。0(zero):筋収縮が全くみられない1(trace):筋収縮はみられるが,それによる関節運動はみられない2(poor):重力の影響を除去すれば,その筋の収縮によって関節運動が可能3(fair):重力に逆らって関節運動が可能だが,それ以上の抵抗を加えれば不能4(good):重力及び中等度の抵抗を加えても12東京都医学検査 Vol. 53 No. 1関節運動が可能5(normal):強い抵抗を加えても運動可能 MMTは確認すべき筋肉が上肢下肢で10箇所以上あり,技師が正確に評価するのは困難であるが,検査対象の神経に対応する被検筋について,「全く力が入らない」,「MMT3くらい」,「運動可能」くらいは確認してみる。 まずは「信頼性の高い」「アーチファクトの少ない」検査結果を臨床側へ報告出来るようにすることが大切である。それには主に以下の事象について考えながら検査を進めていく。〈基準値の設定〉 潜時・振幅・持続時間・神経伝導速度などの基準値については,成書や講習会等で用いられた数値を使っている場合もあるが,本来は各施設で基準値を設定するのが望ましい。〈電極の位置〉 電極位置や記録電極―刺激電極間距離は施設内で統一する。特に正中神経や尺骨神経の遠位部刺激位置は,遠位潜時の評価が出来るよう施設内で必ず統一し決めておく必要がある(図1)。 一般的には次のいずれかとする。①記録電極から直線で7cm図1 記録電極―刺激電極間距離の決め方の例
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