東京都臨床検査53巻1号
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 医師の働き方改革にもとづく法改正によって,臨床検査技師へのいわゆるタスクシフトが行われることが2021年度決定された。それから2年後の2023年,新カリキュラムのもとで臨床検査技師養成機関の学生に対する講義・実習を行うことができる準備がなんとか整った。そして今年(2024年),厚労省より,旧カリキュラム時に入学した学生について国家試験の受験申し込みを行う前に,現在各都道府県技師会が行っている講習会と同様の講習会を各大学で行う様にとの指示が出された。 幸か不幸かこの3年間,私は実務委員として,学生を教育する臨床検査技師のみならず病院に勤務する臨床検査技師に対しても,タスクシフトに関する講習会の運営に関わっていくことになってしまった。恥ずかしながら専門以外の分野をほとんど勉強してこなかった私にとって,この3年間は新たな勉強や試行錯誤の連続であり,限られた時間内に多くの勉強をしなければならない困難な期間であった。しかし私があえてこのような困難をうけいれたのは理由がある.このタスクシフトがこれからのチーム医療の強化に結び付くと考えたからである。 本稿では私のこの3年間の私のタスクシフト運営についての経験や,私の思うタスクシフトの到達点について記していきたいと思う。この雑文がみなさまの病院での検査業務や学校での教育に少18東京都医学検査 Vol. 53 No. 1しでも役立てば幸いである。 働き方改革に伴って労働基準法が改正され,2019年から多くの業種で時間外労働に上限が設けられた。運送業,建設業,そして医師は準備期間として5年間運用が猶予されたのち,2024年4月1日から,これら3業種も規制の運用が始まった。私たちに関係する医師については,休日労働も含めて,上限は年960時間,地域の医療提供体制を確保するためにやむをえず上限を超える場合には,年1860時間となった。 一般企業での過労死が徐々に問題となり,月80時間以上もの残業,時間外労働の是正が求められるようになった。2019年厚生労働省実施の医師の勤務実態調査結果によると,勤務医の時間外勤務について年960時間超が37.8%,上位10%は年1824時間以上との報告があった。厚生労働省の中に医師の働き方改革に関する検討会が設置されており,この医師の時間外労働の制限に加え,タスクシフティングの推進は重要であると報告されている。厚生労働省医政局は,合計30の医療関連団体よりタスクシフトについて具体的な業務内容や課題についてのヒアリングを実施し,検討され,そして今回の法改正へと進んだ。>> 医療情報シリーズ「タスク・シフト/シェア(教育施設の現状)杏林大学保健学部編」杏林大学保健学部臨床検査技術学科 水谷奈津子1.2024年労働問題と医師の働き方改革第3回タスク・シフト/シェアと教育施設大学に課せられた責務,そしてその到達点とは

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