良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法の一部を改正する法律が2021年に参議院を通過し,法改正がされ,新たに10行為が追加された。さっそく各都道府県にて現職臨床検査技師向けに講習会を開始することになった。しかし当時は,コロナ真只中であった。東京都内の病院では,入院病床が不足し,逼迫した状況となっていた。この講習会で講師を担当する者は,医師または看護師でなければならないとされたが,医師も看護師もまさに人手不足となっていた。 私も東京都の臨床検査技師会より,本学の看護学科および看護養護学科の先生のうちどなたかにお願いすることはできないかとの依頼を受けた。そのころは全国的にどの大学もオンライン授業化や登校しても必要最低限の事しか出来ない状況であった。さらに学生や教員のコロナ感染者が出てしまった時には,その対応に追われる日々であった。 杏林大学保健学部臨床検査技術学科では,これらの法改正に伴い,全国の臨床検査技師養成の大学・短期大学・専門学校と同様にカリキュラムが改正された。本学では医療安全管理学の科目内に今までの検体採取と今回新たに追加された項目を含めて実習込みの科目となった。私は前任の教員の後を継ぎ,科目責任者となった。責任者となるからには,文字通り学生への教育に対して責任が生じる。追加された項目の中には,私にとって未経験の業務や,今後も携わる可能性の極めて低い業務も含まれている。しかしそれは全ての大学・教育施設に携わる臨床検査技師教員にとっても同様であり,逃げるわけにもいかず,なんとかして習得せざるを得ない窮地に立たされた。 さらにコロナ禍の影響により,東京都は他の県よりも実技講習会の開始がかなり遅れることとなった。しかし新カリキュラムの医療安全管理学の講義及び実習の開始時期は刻一刻と迫ってくる。一次受講のオンライン座学は素早く受講を終えられたが,肝心の講習会は受けられない,はじまらない,ある地方の県の技師会へも問い合わせてみたが,その県の技師会に所属されている多くの技師の方々よりも先に受講は無理とのことであった。 ようやく東京都の講習会が開始できた頃に,クリック競争に勝利し,実技講習を受けることができた。実際に受講した内容の中には,誘発筋電図や成分採血については大学内での実習はとても無理な内容が含まれていた。そこで日本臨床衛生検査学会で作成された動画を教育目的で使用させていただくことを交渉したところ,これらの動画や資料は全て病院等で業務を行っている現職の臨床検査技師向けのものであり,著作権の観点から教育施設を含めて他の目的では一切使用不可能であるとの事であった。それではこれらの部分の講義についてどのように行えば良いのかが大きな課題として挙がった。 そのころ厚労省より,主に4年制大学が対象となる旧カリキュラム時の入学学生に対して臨床検査技師の国家試験(2025年2月)の受験申込みを行う前に,現職検査技師が受講中の講習会と同様の講習会を各大学で行う様にとの指示が出された。その理由は,国試の範囲に含まれる為である。これにより本学でも当該講習会の開催を計画しなければならない事になった。 その学生タスクシフト講習会(正式名称は,国試受験申請用指定講習会)の実施委員長は,現職検査技師向けの指定講習会の実務委員を少なくとも数回経験した者でなければ担当できないとされた。私は,東京都の臨床検査技師会の理事役員ではないため,どうすれば実務委員を担当できるのかについて日本臨床検査技師教育協議会会長に相談したところ,さっそく指示をいただき,1回の講習会につき,教員は2名まで実務委員をさせていただくこととなった。その教員枠の取りまとめを引き受けることになった。いざ実務委員業務に東京都医学検査 Vol. 53 No. 1192.法改正,そして講習会・教育へ
元のページ ../index.html#25