写真2 新カリキュラムの実習風景(痰の吸引)カリキュラム改定後初めての実習風景。手前の教員が筆者(水谷)。 医師の働き方改革タスク・シフト/シェアは,今後も数年から十数年おきに法改正が行われ,臨床検査技師が行える検体採取,検査技術が追加されると思われる。現行制度の下で医師から他の医療関係職種へのタスク・シフト/シェアが可能な業務の具体例(表1)に示されており,これらがさらに検討されて追加されていくと思われる。また今後は医師だけでなく仕事量の多い看護師からも振り分けられると想定される。 さてそのタスク・シフト/シェアの最終目的はどこにあるのか。それは医療の現場におけるチーム医療の強化であると私は考える。 私は,順天堂大学大学院医学研究科の博士課程を卒業したが,大学院講義の中で“チーム医療の東西”という内容についてとても興味深く感じた。アメリカテキサス州のMDアンダーソンがんセンターをはじめとして,東南アジアまで各施設の医療従事者たちの業務の実際について,視察された先生による講義であった。MDアンダーソンがんセンターでは,1人のある患者さんについて,白,ピンク,ブルーなどの様々なジャケット型白衣を着た医療者が盛んにディスカッションを行っていた。日本では,なんとなく医師は医師とわかる感じのタイプの白衣を着用しており,チーム医療の様子を見てもなんとなくどの人が医師で看護師だとわかりやすい感じである。がしかし,MDアンダーソンでは,どの人が医師なのかが全くわからない様々な白衣であり,皆が平等に意見し合っている様に見えた。しかしそこには医師は不在で,看護師(癌認定看護師なども含む),薬剤師,放射線技師,医学物理士,臨床検査技師であったようだ。それぞれの専門性を活かしてどの治療をどのように行うのが良いかについて話し合っている場面であった。講義での説明によると方針が決まったら,担当医へ報告され,承認後に治療が開始されたという内容であった。 日本では,医療行為につながるような技術的な事は,全て医師の指示のもとで行う。医師の監督下で行うとされているが,その講義内容では,それぞれの医療技術者がのびのびと患者のためにどうすべきなのかを真剣に話しているとのことであった。まさに一歩進んだチーム医療が行われている風景に私は感じた。各国それぞれ法律が異なるのでそっくり日本に取り入れることは無理があるが,良い部分について今後は取り入れていく方向にすべきだと思われる。 私は長い間,杏林大学医学部付属病院で細胞診および病理検査に従事してきた。詳細は控えるが,その経験の中で,技師の視点を積極的に取り入れることが患者にとっても,現場にとってもよりプラスになるのでは?と思うことがしばしばあった。 一方チーム医療をもとにした検討会は,私自身は積極的に動き,またリーダーシップをとっていた。その代表格が,乳腺カンファレンスである。術前術後の検討会を乳腺外科医,超音波検査士,放射線科医,放射線技師,病理医,そして私が細胞検査士の立場で,そして皆がカンファレンス室に集まり,手術予定の症例の確認から,術後の症例で病理組織診断結果が報告された症例で興味深い症例について画像診断から穿刺吸引細胞診,針生検,そして手術材料までのそれぞれの結果について順を追って,皆で見直しをしていた。当時は,おそらく全国的にも乳腺外科医の先生方,そして東京都医学検査 Vol. 53 No. 1213.タスク・シフト/シェアの到達目標
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