東京都臨床検査53巻1号
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‌東京都医学検査 Vol. 53 No. 1『敗血症とその検査~プロカルシトニンを中心に~』Ⅰ.はじめにⅡ.‌‌「敗血症とその検査について~プロカルシトニンを中心に~」■開催日:2024年5月22日(水)■講 師:‌‌積水メディカル(株)カスタマーサポートセンター学術企画グループ須長 宏行■生涯教育点数:専門―20点 世界では年間約5,000万人が敗血症(Sepsis)を発症し,うち約1,000万人以上が死亡していることが報告されています。 敗血症は発症率,致死率も高く,救急・集中治療領域だけでなく,一般診療の現場においてももっとも重要な疾患の一つです。 今回ご紹介する「敗血症とその検査について~プロカルシトニンを中心に~」は,敗血症の基礎知識とその周辺の基礎知識についてまとめた約60枚のスライドより構成されています。1.敗血症とは2.プロカルシトニン(PCT)とは3.ラテックス免疫比濁法(LTIA法)4.リーフレット(敗血症診療)解説 以下,構成スライドの一部についてその概要を示します。1.敗血症とは◆‌‌Keyword:敗血症(Sepsis),診療ガイドライン,定義,診断基準,SIRS(サーズ:全身性炎症反応症候群),SOFA(ソーファ)スコア,quick‌SOFA(qSOFA),菌血症1)「敗血症の発生率と死亡率」 日本国内の入院患者における敗血症の発症は,2010年(約11万人)から2017年(36万人)48にかけて年々増加しており,同期間の死亡数(1000人当たり)も約6.5人から約8.0人に増加しています。これは医療の進化とは異なる結果であるといえます。2)「ICUでの死亡率(ドイツ)」 このスライドではドイツの状況が示され,SOFAスコアの上昇とともに敗血症の死亡率は高まり,敗血症の死亡率は1995年(16%)から2006年(27%)にかけても増加しています。3)「敗血症(sepsis)定義の変遷」 1991年にSepsis1が公開されて,敗血症は「感染によるSIRS」と定義されました。その後,Sepsis2が公開され,現在は2016年に公開されたSepsis-3により,敗血症は「感染症に対する調節不能な宿主反応により発症する臓器障害」と新たに定義されました。4)「新旧定義の「敗血症」解釈の注意点」 Sepsis-3において,敗血症は「感染症を発症してかつ臓器障害を伴った場合に限定」され,ICUにおける臓器障害の評価には新たにSOFAスコアが導入され,ICU以外での敗血症のスクリーニングにはqSOFAが導入されました。5)「敗血症とは」 敗血症は,感染症の患者体内で起こる過剰な生体反応によって組織障害や臓器障害を引き起こす致死性の病態といえます。国内では年間約10万人(推定)が亡くなっており,ブドウ球菌,大腸菌,いくつかの連鎖球菌などによる細菌感染が主要な原因といえます。6)「敗血症と菌血症」 菌血症は,細菌が血液中に侵入して検出される状態を指します。一方,敗血症は,全身症状を伴い,重篤な臓器障害が引き起こされる病態を指します。免疫血清検査研究班研修会―要旨

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