東京都臨床検査53巻1号
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『閉塞性肺疾患を学ぶ~末梢気道抵抗・気道抵抗を中心に~』51■開催日:2024年5月28日(火)■講 師:東北大学 大学院医学系研究科小川 浩正■生涯教育点数:専門―20点 気管は分枝構造をとり,気管から通常分枝を繰り返し,23分枝目で肺胞に到達します。Small airwayは,内径が2 mm未満の気道として定義されており,通常,気道の第8世代から呼吸細気管支までとし,肺の総容積の98.8%を占めます。一方で,健常人の場合,Small airwayが規定する抵抗は,総気道抵抗の約10%にしかすぎません。呼吸生理学上,気流に対する最大抵抗領域は近位の第4-8世代目にあり,この領域が,一秒量や最大呼気速度を決定する因子となり,small airwayは,従来の呼吸機能検査では把握することが困難で,従来の呼吸機能検査ではほとんど異常がなくても広範囲の疾患が存在する可能性があるため,small airwayは,「サイレントゾーン」とみなされていました。しかし,閉塞性肺疾患の代表疾患であるCOPDをはじめとして種々の呼吸器疾患において,このsmall airway機能障害が病初期にみられ,疾患進行とともに悪化し,疾患重症度と密接に関連することが明らかにされてきています。 COPDを病理学的観点からみると,small airway障害(炎症に伴う内腔閉塞・気道壁肥厚)と実質破壊(気腫化)で特徴づけられます。small airwayの数や内腔閉塞,炎症の程度は一秒量と相関があり,その結果,末梢気道抵抗増加につながっています。small airwayの末梢気道抵抗増加は,呼気流速制限をもたらし,過膨張の原因となります。 気管支喘息も,COPD同様肺の慢性炎症性疾患であり,気道の閉塞と過敏性を生理学的な特徴とします。気管支喘息においても,small airwayの病態への関与が示されています。気管支喘息を病理学的観点からみてみると,重度の気管支喘息患者では,small airway内腔が閉塞し,炎症性浸潤が認められています。small airwayの過敏性をみてみますと,健常人にくらべ亢進していることも示されています。 このように,閉塞性疾患において,small airwayを評価することは,病態評価および治療に有益な情報をもたらすものと言えます。 small airway機能を評価する実施可能な方法として,スパイロメトリー,肺気量分画測定,クロージングボリューム測定,そして,広域周波オシレーション法があげられます。スパイロメトリーにおいてsmall airway機能評価の指標は,最大中間呼気流量MMF(FEF25%-75%)です。FVCが正常のときのみ評価可能ですが,ばらつきが大きく,small airwayの異常との相関性はあまり高くないことが示されています。肺気量分画では,RV/TLCがsmall airway機能評価の指標とされています。クロージングボリューム測定では,CV増加やデルタN2増加がsmall airway機能異常の指標とされています。いずれもsmall airway評価において精度にかけるところもあり,新たな検査方法が期待されておりました。東京都医学検査 Vol. 53 No. 1 生理検査研究班研修会―要旨

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