東京都臨床検査53巻1号
60/140

V1およびV2誘導ではT波の振れはQRS波と逆表 心電図だけである程度診断できる不整脈および疾患/症候群aVL・V5・V6),ε波はV1誘導で記録された場合にこのようによばれる。J波は正常者でも記録されるが,特発性心室細動とも関連する。ε波は不整脈原性右室心筋症で記録される。 T波:心室の再分極を表す。心室は心房に比べて厚い心筋なので,脱分極から脱却する過程までもが心電図で記録される。成人では,V1誘導とV2誘導を除いてQRS波と同じ方向の振れを示す。で下向きになる(小児~青年期ではV1誘導は下向き)。心室の再分極には,脱分極より4~5倍くらい長い時間が必要である。脱分極が刺激伝導系を介して瞬時に行われるのに対して,再分極にはこのような伝導系を介した伝達がないため,より長い時間を要してしまう。T波の異常は,心室性不整脈の発現にもっとも関与する。再分極は,いわば心室筋が強く収縮した後の憩いの時間であり,この時間が傷害されるため心室性不整脈が発症するというように理解すると納得できる。T波の異常には,陰性T波,先鋭T波などがある。 ST部分:QRS波とT波の間でやや平坦となる54東京都医学検査 Vol. 53 No. 1不整脈・伝導障害・洞徐脈/頻脈・洞不全症候群・房室ブロック・補充収縮・心房/心室期外収縮・副収縮・心房頻拍・心房細動・心房粗動・(発作性)上室頻拍・心室頻拍・促進性心室固有調律・torsade de pointes・心室細動・脚(右脚/左脚)ブロック・分枝(前枝/後枝)ブロック・2枝/3枝ブロック疾患/症候群・左室肥大・(労作性/不安定/冠攣縮性)狭心症・(急性/陳旧性)心筋梗塞・肥大型心筋症・不整脈原性右室心筋症・たこつぼ型心筋症・急性心膜炎・(大量)心膜液貯留・肺高血圧症・電解質(K/Ca)失調・WPW症候群・QT延長症候群・QT短縮症候群・Brugada症候群・早期再分極(J波)症候群・ペースメーカ心電図ところがあり,ST部分とよばれる。虚血性心疾患,心膜炎,Brugada症候群の診断に有用である。虚血性心疾患においては,ST部分は乏血の状態(狭心症)であれば低下し,壊死(梗塞)が生じると逆に上昇する。Brugada症候群では,上に凸(coved)型のST上昇を示す。馬鞍(saddle back)型のST上昇のみであれば,最近ではBru-gada症候群の心電図とよばなくなっている。 U波:T波に続いて勾配の緩やかな波形がみられることがまれにあり,U波とよばれる。これも再分極を反映する。 RR間隔:正常では,1.2秒(心拍数50/分)から0.6秒(心拍数100/分)である。RR間隔が1.2秒以上であれば徐脈,0.6秒以下であれば頻脈と判断される。 PQ時間:P波の始まりからQ(R)波の始まりまでの時間で,洞結節からHis束までの伝導時間を表す。そのなかでも,特に房室結節内の伝導時間を反映するものである。PQ時間が延長(>0.20秒)していれば房室ブロックと診断される。 QT時間:Q波の始まりからT波の終わりまで

元のページ  ../index.html#60

このブックを見る