東京都臨床検査53巻1号
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『ずっこけ どうする 脳波検査』1.脳神経の評価 脳波検査では国際10-20電極法に準拠した部位へ正確に電極装着をする。電極を取り付ける位置にドレーンや怪我のある場合はその部位から少しずらして電極をとりつけてもよい。ただし左右対称の反対側の電極(例:F3とF4)も同じようにずらして装着し,レポートや技師コメントにその旨を記載する。 皮膚処理を行い,接触抵抗をじゅうぶんに下げてから電極を装着する。研磨剤を用いるとよい。毛髪をしっかりかき分け頭皮を露出させ,電極装着位置にマジックで印をつける。そのマジックが消える程度に,研磨剤をつけた綿棒でこする。その後地肌にペーストをなじませて皿電極を装着する。 皿電極に塗布するペーストの量は,適度な量で空気が入らないよう塗り込んで使用する。 ペースト量が過多の場合は患者が頭部を動かした際に電極が滑って位置がずれたり,ペーストが溶けて垂れることで他の電極とショートする恐れがある。長時間記録する脳波検査の場合はペースト量を多く塗布するが上からカット綿で押さえるなど工夫をする。 頭皮の角質が多い場合や皮膚が汚れている場合は蒸しタオルを使用し,皮膚をふやかしてから皮膚処理を行うと接触抵抗を下げることができる。乳幼児や肌が弱い高齢者なども,あらかじめ蒸しタオルで電極装着部位を拭いておくと傷つきにくい。また法的脳死判定の脳波検査で,前腕など頭部外の電極装着部位に蒸しタオルを当てることで,接触抵抗をじゅうぶん下げることができる。 動きの多い乳幼児や幼児,仰臥位の姿勢がとりにくい高齢者では,ネットや伸縮包帯で電極を固定すると,急な患者の動作や姿勢転換に対しても電極が外れることなく記録することができる。 脳波との識別,由来の鑑別を行い,技師はでき2.脳波検査の基本と注意点3.‌‌脳波検査で脳波以外に混入するアーチファクトについて■開催日:2024年7月24日(水)■講 師:日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院井澤 和美■生涯教育点数:基礎―20点 脳神経の評価として代表的な検査は,CTやMRIをはじめとする画像検査と,脳波などの機能検査が挙げられる。画像検査は空間的分解能にすぐれ,脳梗塞や脳出血,脳腫瘍などの器質的な異常の検出を得意とする。機能検査は時間的分解能にすぐれ,脳神経の働き,発達,意識状態など機能状態の把握をリアルタイムに評価することができる。 救急外来やICUなど患者の状態が不安定で予測が立たない状況下では,モニタリングツールの条件として①モニター値が連続的であること②ベッドサイドで可能なこと③非侵襲的であることが重視される。心電図や血圧といった既存のモニタリングと同様に,脳神経のモニタリングツールとして脳波が注目されている。 脳神経は①解剖学的評価,②血流評価,③電気生理学的評価の3つの側面で評価が行われる。①解剖学的評価について,脳波の空間的分析能力は画像検査と比較して非常に低いが,背景活動の徐波化や新規のてんかん性発射など,新規の脳波異常の出現をスクリーニングすることができ,急激な病態悪化を素早く認識するアラームとしての役割が期待される。②血流評価について,脳波は血管と血流そのものを評価することはできないが,急激な徐波化の進行は脳の虚血性の変化を示すなど,脳血流と脳波所見の変化及び病態生理の関係についての報告がされている。③電気生理学的評価について,脳波の役割は非常に有用である。以上から,脳神経のモニタリングツールとして脳波は有用であるといえる。60東京都医学検査 Vol. 53 No. 1

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