東京都臨床検査53巻1号
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であるが,それをどれだけ遵守したとしても,思うように検査がいかないことが多くある分野である。検査の成功と失敗には,接した患者や症例の数など経験の要素を省くことはできない。特に脳波検査は,検査者自身が以前の経験を重視するあまり,その思い込みによって失敗することがある。 症例:10歳男児,全身痙攣を起こしてんかんの疑いで脳波検査を施行した。 検査の準備中に詳細を聴取すると以下のことがわかった。・普段の睡眠時間はAM0:00-07:30・‌‌‌脱力というよりビクッとなる,時間帯に特徴はなく以前から自覚はあった・‌‌検査前日の夜は風呂場で胸を打つくらいの大きなものがあった 安静閉眼時は後頭部優位に基礎律動波が左右差なくみられた(図1)。睡眠時の脳波では前頭部優位に焦点のあるてんかん性放電(棘徐波複合,群発)が出現し,全般性に広がることもあった(図2)。患者のエピソードと脳波の所見から若年ミオクロニーてんかんとの鑑別が必要と考えた(表1)。似ている点と異なる点があり判断に迷った。仮にミオクロニーてんかんである場合,光刺激で東京都医学検査 Vol. 53 No. 1図1 覚醒,安静閉眼時るかぎり除去するよう努めなくてはならない。 代表的なアーチファクトは以下のものが挙げられる。・‌‌患者由来:心電図,脈波,眼球運動,筋電図,発汗など・電極由来:電極の不良,装着の不良など・環境由来:交流障害,静電気,人工呼吸器など 特に電極の不良については,脳機能低下があり局所性の徐波がある場合,複数の電極が不安定な状態にあると,それが電極装着不良によるものか真の脳波かの判断に判読医が迷うこととなる。記録している技師がその場で考えながら対処することで判読医は意識障害の評価を適切に行うことができる。 記録をする技師は,ただマニュアルどおりに操作をするのではなく,判読医が患者の状態を適切に評価できる波形であるかをその場で対応・判断しながら記録する必要がある。 生理検査は人間相手の検査である。機器の取り扱い方法や手順に沿って検査を進めることが基本4.‌‌症例から学んだ「ずっこけ‌どうする‌脳波検査」61

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