東京都臨床検査53巻1号
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■開催日:2024年9月12日(木)■講 師:チェスト株式会社西貝 学■生涯教育点数:専門―20点 呼吸機能検査の目的は,被検者の正確な呼吸機能の状態を把握し対応や治療に活かすことである。そのためには,臨床側に提供する検査結果が正確なものである必要があり,正確な検査結果を導くためには,使用する機器の取扱について十分に知っておく必要がある。 呼吸機能検査機器の種類は2種類に大別される。①気流型 フローセンサにより気流量を直接測定し,その気流量を積分して気量を得るタイプ。小型のスパイロメーターは主にこの方式を採用している。フローセンサの種類として,差圧式流量計,熱線式流量計,超音波式流量計などがある。②気量型 閉鎖された機器内部に送り込まれた気量を直接測定し,その気量を微分して気流量を得るタイプ。ベネディクト-ロス型やローリングシール型がある。現在の主流はローリングシール型の機器である。 較正と精度管理を行う目的は,検査機器が常に一定のデータを出せるように点検・調整することである。これは正確な検査結果を臨床に届けるためにとても大切な作業である。なお,較正は較正用シリンジの容量を機器におぼえこませる作業,精度確認は機器におぼえこませた容量が測定値として正確に出せるかどうかの確認作業である。 これらは較正用シリンジにより行う。較正用シ66東京都医学検査 Vol. 53 No. 1 『達人は検査機器を知る ~メーカーがスパイロメーターについて語る~』Ⅰ.はじめにⅡ.呼吸機能検査機器の種類と原理Ⅲ.較正と精度管理リンジは3Lのものを使用することが多い。 おもな検査項目における較正と精度管理について,以下に簡単に記載した。基準の数値や頻度などについては,呼吸器学会から発行されている「呼吸機能検査ハンドブック」1)に詳細が記載されているので参照されたい。・スパイロメトリー 気流型においては,較正用シリンジを用いた気量の較正と精度確認,気量型においては精度確認を行う。それに加え既知健常者による精度確認も推奨されている。・肺拡散能 較正用シリンジと測定に使用する4種混合ガスを用いて,容量と希釈率の精度確認を行う。既知の非喫煙健常者によるDLCOの確認も推奨されている。・機能的残気量(ガス希釈法) 機器の死腔量と,較正用シリンジを用いて測定したFRCの確認を行う。・ガス洗い出し法(クロージングボリューム) 較正用シリンジを用いて容量を確認する。またN2濃度の立ち上がりを確認する。 なお,精度管理の具体的な方法に関しては,各メーカーや各機器で決められた手順があるはずなので,それらを参照する。 較正や精度管理を行わないと,フローセンサの感度が変化していることや,ガスセンサの異常,回路などからの漏れに気づけない可能性がある。いずれも測定値に大きな影響を及ぼすため,被検者の臨床判断に影響するリスクともなり得る。定期的な較正や精度管理を行うことにより,検査前にこれらのリスクを出来る限り無くしておく必要がある。

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