東京都臨床検査53巻1号
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 臨床的意義の低い抗体を保有している場合は,血液製剤の選択の際に,抗原陰性血の選択は必要ありませんが,臨床的意義の高い抗体を患者が保有している場合には,抗原陰性血を選択する必要があります。反応増強剤無添加での間接抗グロブリン試験(37℃,60分)で確認し,結果次第で陰性血の選択が必要な抗体がありますので注意が必要です。 不規則抗体検査は,間接抗グロブリン試験が必須の検査法となります。また,使用する反応増強剤を用いることで反応時間を短縮し,検出感度を上げることができます。臨床的意義のある不規則抗体を検出する上で最も信頼できる方法とされ,この方法単独で不規則抗体検査を行うことができます。 一方,生理食塩液法および酵素法は検出できる不規則抗体が限られ,特に酵素法では非特異反応なども見られます。ですが,これらは不規則抗体を同定する際に有効な場合があります。赤血球型検査のガイドラインでは,生理食塩液法および酵素法は検査法としては単独では用いず,補助的に用いるよう,言及されています。 これらの検査を行った後,抗体の推定と消去法を行います。 まず,不規則抗体スクリーニングの判定で陽性または陰性の判断を行います。不規則抗体スクリーニングが陽性の場合,消去法を実施し否定できない抗体の推定を実施します。 その後,パネル赤血球による同定検査に進む場合は,同定検査結果より可能性の高い抗体の推定と消去法を実施して否定できない抗体の推定を行います。 更なる抗体特異性の絞込みでは,患者情報の確認,追加パネルによる検査,追加試験の実施,統72東京都医学検査 Vol. 53 No. 14.臨床的意義のある抗体とない抗体5.不規則抗体の検査法6.同定までのプロセス

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