図2 凝固・線溶の概略 凝固線溶系の概略図を図2に示しました。フィブリノゲンにトロンビンが作用し,フィブリン(血栓)が形成されます。プラスミンによりフィブリンが分解された産物がDダイマー,線溶が過剰に活性化し,フィブリノゲンやその関連分子まで分解された産物がフィブリノゲン分解産物(FgDP)です。 図3左に線溶の流れを示しました。組織型プラスミノゲンアクチベータ(tPA)はフィブリン上で効率よくプラスミノゲンをプラスミンに活性化し,線溶を開始します。プラスミンによりフィブリンが分解され,フィブリン分解産物(Dダイマー)が血中に増加します。遊離したプラスミンはα2-プラスミンインヒビター(α2-PI)によって阻害され,その活性がフィブリンに限局するように巧みに調節されています。このように血栓形成に対し,線溶がコントロールされている状態ではFDPとDダイマーは近似すると考えられます。一方,図3右では,線溶が過剰に活性化される場Ⅳ.FDP,DダイマーについてⅤ.FDP,Dダイマーの臨床応用Ⅲ.凝固・線溶について合を示しました。線溶が過剰に活性化するような状態・病態ではFDPがDダイマーより高値になると考えられます。 FgDPとDダイマーを図4に図示しました。FDPはFgDPとDダイマーを合わせたフィブリン・フィブリノゲン分解産物の総称です。FDPもDダイマーも多様な分子を含むヘテロな測定対象であるといえます。これらの分子をモノクローナル抗体を利用した試薬で測定することから,抗体の反応性の違い,キャリブレーターの構成の違いなどから試薬により測定値の違いが生じることがあります。 FDPは各種のDIC診断基準に採用されています。播種性血管内凝固(disseminated intravas-cular coagulation:DIC)は,基礎疾患の存在下に全身性持続性の著しい凝固活性化をきたし,細東京都医学検査 Vol. 53 No. 175
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