東京都臨床検査53巻2号_2
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135電子カルテ臨床検査システム電子カルテ臨床検査システム図1 システム連携パターン HISとLISの連携パターンは主に以下のように分類されます。1.単方向・双方向インターフェース連携:最も基本的な連携形態で,HISからLISへの検査オーダー送信と,LISからHISへの結果返送を行います。2.共有データベース方式:同一ベンダーが提供するHISとLISが同一システム上に共存するパターンで,コスト効率が高く,同一端末での操作が可能なため,パニック値報告などの緊急対応が迅速に行えます。3.分離システム連携:別々のベンダーが提供するシステムを連携させるパターンで,検査部門の専門性に特化したカスタマイズが可能である反面,システム間の整合性維持に労力を要します。4.標準規格による連携:HL7などの医療情報交換規格を用いた連携で,相互運用性が高く,将来的な拡張性にも優れています。5.WebサービスAPI連携:最新の技術を活用した柔軟な連携方式で,異なるプラットフォーム間での連携が容易です。 施設規模等によって連携レベルは様々と思いますが,多くの施設が主に下記2つのパターンに分かれていると思います(図1)。 Aパターン(共有データベース方式):HISとLISが同じベンダーから提供され,同一システム・端末上に共存しているパターンです。このパターンの利点として,導入や維持にかかるコストがBパターンに比べて安価になる傾向があります。同一端末でHISとLISの操作が可能なことから,たBパターンHISとLISが別々AパターンHISとLISが共存とえば,生化学検査のパニック値がある場合,検査結果登録アプリ画面から電子カルテの入力画面を呼び出し,即座にパニック値報告の入力ができます。また,血液検査検体に輸液が混入した可能性の確認や,ヘパリンなどの抗凝固剤を用いた抗血栓療法の有無などを迅速に確認できます。さらに,検査依頼・検査結果・保険点数などの紐づけが,同じシステム内で完結するというメリットもあります。このため,システムサーバは電子カルテと同一となる場合が多いです。 Bパターン(分離システム連携):HISとLISが同じもしくは異なったベンダーにより提供され,システム的に連携しているものの,端末は分かれているパターンです。一部のベンダーではLISの端末画面で電子カルテを参照することも可能ですが,基本的には端末は別々の端末で操作します。このパターンの利点として,システムサーバが分離されているため,一方のシステムにトラブルやダウンが発生しても被害が最小限に抑えられることが挙げられます。また,臨床検査に特化したシステムであるため,臨床検査技師のニーズに合わせたカスタマイズが可能で,画面構成やTAT(Turn Around Time)の算出,顕微鏡を用いた検査への適応,検査機器のシステムとの接続など,Aパターンに比べ様々な面で専門性の高いシステムとなっています。ただし,保険点数や臨床検査のマスター管理などが複雑になりやすく,新規検査項目の導入や仕様変更等がある場合は,Aパターンよりも作業量が増加する傾向があります。 ※近年,統合仮想基盤サーバを構築(部門サーバの統合管理)する流れがみられます。従来の電子カルテサーバと部門サーバを仮想サーバで一括管理し,設置の省スペース・省エネルギー化,高可用性と災害復旧の迅速化としてサーバを集約します。また,バックアップ環境(セキュリティ対策の強化)としては,施設内の別棟へバックアップの複製(レプリケーション:同じシステム環境が2セット(稼働系と待機系))を追加して,災害などの物理的な緊急事態に対応したり,2次東京都医学検査 Vol. 53 No. 2

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