東京都臨床検査53巻2号_2
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‌■生涯教育点数:専門―20点■開催日:2024年11月6日(水)■講 師:‌‌虎の門病院 中央検査部‌血液凝固検査科 染色体検査室保戸塚 真人 FISH(Fluorescence in situ hybridization)法は,蛍光標識されたDNAプローブをスライドガラス上の細胞のDNAと結合させて蛍光顕微鏡で観察することにより,対象とする遺伝子の融合,分離,重複,欠失などの情報を得る検査法である。細胞周期の分裂期の染色体を必要とするG分染法とは異なり,分裂像が得られず核型解析が実施できない検体でもFISH法は検査を行うことができる。Ⅰ,造血器腫瘍におけるFISH法の利点と欠点 FISH法は,分裂中期,間期細胞のいずれも対象で分析細胞数は100~1,000細胞,所要日数は1~2日,目的としては既知の特定された染色体異常の検出,定量的な染色体解析である。利点として,培養が不要なため,短時間で解析可能で微細な転座や欠失が検出可能で,微量検体の解析が可能で定量的な解析が可能となっている。欠点としては目的の染色体異常以外は判定不可能,プローブにコストがかかる,蛍光顕微鏡が必要なことなどがある。Ⅱ,FISH法の原理 遺伝子は2重らせん構造で塩基対を持っており塩基同士は水素結合をしている。そこに熱を加えて一本鎖のDNAを作成する。この操作をディネーチャーという。目的の遺伝子配列と結合するように設計された塩基配列をもつプローブを一本鎖DNAと結合させ2本鎖にする。遺伝子に本来とは異なる核酸の分子を結合させて2本鎖分子を作ることをハイブリダイゼーションという。プローブは蛍光色素で標識されており,蛍光顕微鏡で目的の遺伝子配列を検出することができる。236東京都医学検査 Vol. 53 No. 2『②基礎から学ぼう!FISH検査編』Ⅲ,FISH法のプローブの種類1,反復配列プローブ セントロメアプローブとテロメアプローブがある。セントロメアプローブは特異的な染色体のセントロメアにドット状のFISHシグナルが検出される。テロメアプローブは染色体腕の末端領域が関与した微細な構造異常の同定に役立つ。2,特定部位のプローブ 染色体バンド特異的DNAプローブ,特異的染色体点座検出用プローブ,疾患特異的プローブがある。染色体バンド特異的DNAプローブは,特定の領域が染色体構造異常に関与しているかを確認するときに利用できる。特異的染色体点座検出用プローブは,主に白血病やリンパ腫などにおける病態に関連のある染色体転座を検出するプローブである。疾患特異的DNAプローブは,染色体欠失により発症する常染色体欠失症候群や隣接遺伝子症候群を診断するためのプローブである。3,染色体ペインティングプローブ M-FISH法やSKY法に使用されるプローブで分裂像が必要となる。染色体すべてを染め,一つの細胞分裂像の上で個々の染色体ごとに色分けをして染色体・遺伝子異常を同定する。Ⅳ,当検査科でのFISH法の検査工程 検体種は末梢血液,骨髄液など。生検体なので低張処理から行い,カルノア固定,スライドに固定液を落として標本を作製する。その後,標本をエージング,ディネーチャーをして,ハイブリダイゼーションを一晩行う。二日目に蛍光顕微鏡で観察しカウント,報告書を作成して結果を報告する。報告の際には2名でダブルチェックをし,最終報告を行う。Ⅴ,当検査科でのFISH検査項目紹介(一部)1,異性間BMT BMTは,Bone Marrow Transplantation の略称。異性間BMTは,移植後の患者に行う検査で,患者の性別と異なるドナーの細胞を移植した

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