東京都臨床検査53巻2号_2
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247■開催日:2024年9月18日(水)■講 師:‌‌日本赤十字社 関東甲信越ブロック血液センター 検査部 検査三課長‌小林 洋紀■生涯教育点数:専門―20点 「白血球の血液型」として知られるHLAは非常に多くの多型性を有し,多くの役割を持っている。HLA遺伝子は,あらゆるゲノムの中で最も多い多型と,非常に複雑なシステムを持つ遺伝子である。造血幹細胞や臓器の移植,特定のHLA型を持つ患者が,ある特定の疾患を発症しやすいことが見出されたことや,HLAは免疫を誘導する事も知られている。様々な異物に対応できるよう体内で準備した結果と考えられる。 HLAは,「自己と非自己を区別し非自己を排除する生体防御機能」自他認識のマーカーとして重要な免疫機能を有する組織適合性抗原である。HLAは,クラスI(HLA-A,B,Cなど)とクラス赤血球以外のほぼ全ての細胞に発現している。一方,クラスIIはマクロファージや樹状細胞,単球,B細胞などの抗原提示細胞に発現が局在している。なお,赤血球にはどちらも発現していない。HLAクラスI分子は,細胞内で合成されたペプチドを提示し,CD8陽性細胞傷害性(キラー)T細胞がこれを認識して標的細胞を傷害し細胞死を誘導する。HLAクラスI分子は,ウイルス感染細胞や腫瘍細胞などの非自己の排除に重要な役割を担っている。HLAクラスII分子は,細胞外から来たペプチドを提示し,CD4陽性細胞傷害性(ヘル『輸⾎医療におけるHLA検査(PC-HLA供給までのフロー)』〇はじめに〇HLAの基礎〇HLA関連検査〇血小板輸血とPC-HLAII(HLA-DR,DQ,DPなど)があり,クラスIはパー)T細胞がこれを認識しB細胞の抗体産生を促進する。また,HLAの各遺伝子は,父親と母親から1つずつ受け継がれ,1つのセットを形成している。これを「ハプロタイプ」と呼び,このハプロタイプの組み合わせは数万通りにもなり,地域差・集団差があり人種によりその頻度は大きく異なる。 HLAタイピング検査は,かつては血清学的に行われていたが,現在は遺伝子型(アレル)を決定するDNAタイピング検査が主流となっている。SSP法,SSO法,NGS等があり必要な精度,コストなどを考慮し使用目的に応じた方法・装置を選択する。抗体検査も同様に血清学的な方法から免疫ビーズを用いた高感度な方法が主流となっている。現在の抗体検査試薬の多くは蛍光ビーズを使用した検出系で,解像度のレベルで区別される(図1)。また,HLA抗体は抗原分子の全体と結合するのではなくエピトープを認識し結合するため,複数の抗原にまたがって広範囲な抗体特異性を持つ特徴がある。 HLA適合血小板(PC-HLA)は,血小板輸血不応(PTR)かつHLA抗体が原因と考えられる場合に適応となる血小板製剤である。PTRの約80%は非免疫学的機序(出血,DIC,感染症,脾腫など)で,約20%が免疫学的機序(HLA抗体,HPA抗体など)でありそのほとんどがHLA抗体によるものである。なお,PC-HLAを用いた場合は,血小板輸血後10分から1時間または翌朝か24時間後の補正血小板増加数(CCI)を測定してその有効性を評価することが「血液製剤の使用指針」で推奨されている。東京都医学検査 Vol. 53 No. 2輸血検査研究班研修会―要旨

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