■開催日:2024年10月11日(金)■講 師:慶應義塾大学病院村松 翔太■生涯教育点数:基礎―20点 本研修会は「採血室の運営とシステム」と題して,採血室のシステム的な取り組みを中心に採血室の運営について紹介する。慶應義塾大学病院(東京都新宿区,960床)は34の診療科と13の診療支援部門を持つ大学病院である。外来患者数は1日平均3000人を超え,全国屈指の患者数を誇る。当院は新病院棟の開院に伴い,病院全体の大規模な移転作業を経験した。 当院外来採血室は1日に約1000人の患者が来室し,採血室移転前はしばしば混雑による待ち時間が問題とされていた。また,採血管発行の仕組みによって採血量が増加しやすい状態となっており,それに伴う患者への負担増加が課題とされていた。 外来採血室では移転を機に,採血室システムを一新し,課題改善のための取り組みを行った。本日はその取り組みと効果について紹介する。 外来採血室は採尿室・検体提出窓口が併設されており,採血・採尿の患者が1日を通して多く来室する。採血対象は5歳以上の全外来患者である。採血ブースは16台(全台上下可動式),ベッド採血用ベッド3台,ストレッチャー1台を完備する。専従スタッフ7名と各部署からの採血出向者で業務を行っている。 導入機器・システムは自動採血管準備システム252東京都医学検査 Vol. 53 No. 2 『採血室の運営とシステム―慶應義塾大学病院での実例紹介―』Ⅰ.はじめにⅡ.外来採血室の紹介Ⅲ.当院の取り組みとその効果BC・ROBO-8001 RFIDを3台と尿検体管理システムu-TRIPS(いずれもテクノメディカ株式会社)である。u-TRIPSは尿コップ提出用ドッグを9台設置している。また,採尿室では全自動尿分注装置IDS-CLAS・Hr(株式会社アイディエス)を2台導入しており,採尿検体は原則自動分注で処理を行っている。1.診察予約時間に合わせた採血 これまでの外来採血室は来室順に採血受付を行い,順次採血を行っていた。早く採血を終えたい,混雑する前に済ませたいなど,診察予約時間とは関係なく,早朝から多くの患者が来室し,混雑を発生させる原因となっていた。これにより,午前中の診察や検査のために採血結果を急ぎたい患者の採血が遅延するなどの問題も生じていた。 そこで取り入れたシステムが『診察予約時間に合わせた採血』の実施である。診察予約時間ごとに採血整理券の番号帯を変え,採血開始時間を診察開始の90分前とした(図1)。 DWH(Data Ware House)からLIS(Labora-tory Information Systems)へ診察予約情報を取り込み,採血オーダーと診察予約情報を紐づけることで可能としたシステムである。これにより,採血のために必要以上に早く来院する必要がなくなり,混雑を分散することで待ち時間の適正化を実現した。システム稼働後は1日あたりの平均待ち時間が稼働前と比較して半減しており,十分な効果が得られている。また,患者も採血受付後,他の検査を受けに行くなど,待ち時間の有効活用が可能となった。外来採血室では1日の採血待ち時間について,「採血待ち時間20分以内を80%以上」という目標を掲げている。システム稼働後はこの目標をほぼ100%達成しており,システム情報システム研究班研修会―要旨
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