図2 内視鏡介助者の移り変わり(これまで) 軟性内視鏡の中でも,消化器内視鏡は特に発展しており,対象部位の観察のみでなくより安楽な検査や精密な観察,そして内視鏡による治療も行えるようになってきました。例として,誕生当初は口からしか挿入できなかった上部消化管内視鏡は鼻から挿入できるほど細径になったり,身体の中から超音波検査を行う超音波内視鏡が行えるようになったりしています。さらに,胃潰瘍などによる出血症例では止血を行ったり,胃癌の内視鏡治療を行ったりするための治療用内視鏡なども開発されています。内視鏡の性能向上に合わせて,消化器内視鏡領域では様々なデバイスが開発されており,軟性消化器内視鏡を用いた内視鏡検査・治療は多岐にわたっています。 内視鏡の歴史や消化器内視鏡の発展で述べたように,最初は観察することのみから始まった内視鏡でしたが,次第に消化器内視鏡においては単なる観察だけでなく,画像による診断や精密検査・治療まで行えるようになってきました。そのため,これまで内視鏡施行医と検査中・検査後の患者さんをサポートし誘導する看護師さん,使用後の内視鏡を洗浄する事務スタッフがいれば行えていた消化器内視鏡検査が,より高度な検査や治療を行えるようになってきたことで内視鏡施行医の傍らでそれをサポートする介助者も必要になってきま264東京都医学検査 Vol. 53 No. 2図3 内視鏡介助者の移り変わり(これから)した。 内視鏡の介助や洗浄消毒を専門的に行うスタッフとして,消化器内視鏡技師制度が1980年から始まりました。現在では,臨床検査技師に加えて,看護師・臨床工学技士・診療放射線技師・薬剤師などの国家資格取得者が2年以上の内視鏡実務経験を経て消化器内視鏡技師認定試験の受験資格が得られるように制度化されています。 消化器内視鏡の発展と消化器内視鏡技師の制度化,さらに診療報酬改定に伴う看護配置基準の変更によって,病棟に配属される看護師が増えることになり,外来部門である内視鏡室では看護師の代わりに臨床検査技師や臨床工学技士を内視鏡介助者として配属させる病院が増えるようになってきました(図2・3)。そして2016年,日本臨床工学技士会から「内視鏡業務指針」が出され,続いて2021年,日本消化器内視鏡学会・技師会より「消化器内視鏡技師業務指針(第1版)」が出されました。どちらも消化器内視鏡介助を行ってきた施設が中心となって,消化器内視鏡介助がどのような業務であるかまとめられています。そして2021年,タスクシフト・シェアによる法改正によって臨床検査技師に「消化管内視鏡検査・治療において,医師の立会いの下,生検鉗子を用いて消化管から組織検体を採取する行為」が認められることとなりました。これまで「業務指針」などの内視鏡業務に関する規定のなかった臨床検査技師に法的な消化器内視鏡業務が明記されたこと<消化器内視鏡の発展><内視鏡介助者の移り変わり>
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