東京都臨床検査53巻2号_2
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内のタンパク汚れを除去しておく必要があります。洗浄者自身が曝露しないように防護を行うとともに,全てのスタッフが同じ質で用手による洗浄が行えるようマニュアルを作成し,洗浄消毒の質の管理を行う必要があります。[3.施設によって異なる内視鏡技師の業務] 内視鏡技師の業務は,内視鏡が行われる施設のマンパワーや内容によって異なります。一般的に,大学病院などでは医師の数が多く,内視鏡治療の数も多いですが介助は医師が行っている施設が多いです。そのため,内視鏡技師は主に検査介助や洗浄消毒の業務を担っていることが多いです。民間病院の場合,大学病院に比べて医師の数が少ない場合が多く,内視鏡治療を積極的に行っている施設では治療の介助も含めて内視鏡技師が行っている施設が多いです。内視鏡クリニックなどでは,難易度の高い治療や透視下での内視鏡治療などは行わず,簡単な治療のみを行うことが通常ですが,それら治療の介助も含めて内視鏡技師が介助を行っています。それに加えて,採血や尿検査,心電図や腹部エコーなども行っているクリニックもあり,臨床検査技師としてマルチな業務を行っています。健診センターでの内視鏡室業務は,治療を行わない代わりに1日の内視鏡件数が非常に多く,検査介助や洗浄消毒において専門性を求められます。特に検査で使用するスコープは使えば使うほど故障がつきものであるため,不具合のない,安全な内視鏡検査を提供するためには内視鏡スコープのメンテナンスや確実な洗浄消毒管理が求められます。[4.内視鏡業務の分担・共通,専任・兼任について] 最後に,内視鏡業務の分担・共通,専任・兼任について解説します。内視鏡業務は,介助者の移り変わりの項でも説明したようにもともと看護師が中心となって行ってきた検査中・検査後の患者管理と使用後内視鏡の洗浄業務(Aとする)に加266東京都医学検査 Vol. 53 No. 2えて,複雑な内視鏡検査・治療介助業務や機器管理業務(Bとする)が追加された業務になっています。内視鏡業務の「分担」とは,Aを看護師が担当し,Bを臨床検査技師や臨床工学技士が担当する,という業務分担のことです。一方で業務「共通」とは,AもBも含めて内視鏡室で働く医療スタッフ全員が共通の業務を行うことです。業務「分担」では,業務「共通」に比べて職種ごとの専門性をより高く持ち,それぞれの職種においてマニュアルを作成し業務を行うことができる,というメリットがあります。デメリットとして,内視鏡業務の全体像が見えにくいこと,職種によって内視鏡業務の制限がかけられてしまうこと,などがあります。 「専任」・「兼任」については,各施設で行われている内視鏡検査・治療の数や難易度によって決まっていることが多いです。1部屋当たり1日平均10件以上内視鏡検査や治療を行っている施設や,大腸のポリープ切除(EMR)だけでなく内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)や透視下での胆膵系治療(ERCPなど)を介助者として技師が行っている施設では,より高度な介助技術を求められることも多いため内視鏡専任で業務を行っている施設が多いです。一方で,検査数がそこまで多くなく,治療も大腸ポリープ切除(EMR)くらいまでの介助のみを行っている施設では,内視鏡本体装置やスコープの管理業務のためにある程度専任に近いスタッフが必要かもしれませんが,兼任スタッフで業務を行うことが可能です。スタッフマネージメントの点から考えると,兼任者を増やすことはメリットになります。一方で高度な内視鏡治療などが多く行われる施設では,内視鏡介助者は医師とのコミュニケーションや信頼関係が非常に大切であるため,専任のスタッフを置く必要があります(図4)。 内視鏡業務の実際について,内視鏡の歴史とともにまとめました。<まとめ>

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