東京都臨床検査53巻2号_2
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1455.生理学的検査における臨地実習の重要性と課題1) 臨床検査技師学校養成所カリキュラム等改善検討会 報告書.厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/ newpage_10734.html2) 日本臨床衛生検査技師会ほか:臨地実習ガイドライン 2021 https://www.jamt.or.jp/data/asset/ docs/gudeline_ver3.pdf3) 臨地実習関連FAQ-日本臨床衛生検査技師会 https://www.jamt.or.jp/asset/g/guidelinefor_ faq.pdfて実施している。それぞれのステップごとに実習指導者が評価基準書を参考に評価を行い,患者に施行できるか判断し行っているが,実際の声かけは患者個々に理解度や説明内容も違うこともあり,臨機応変に対応することが求められる。また,必ずしも努力性肺活量の測定を含めた全ての検査を実施するのではなく,施設によって状況も様々なため可能な範囲(肺活量のみ等)で行うこととされている3)。 患者選択は,見学の際は心電図同様に患者の状態を見て選定しており,実施する場合は呼吸器疾患の指摘がある患者は除き,術前で呼吸器疾患の指摘がない場合や実習に好意的な患者を選定し実施している施設もある。 心電図や肺機能検査に限らず,生理学的検査では特に実際に目の前の患者に対して検査を実施し,検査結果を出すことが求められる。そのため,患者協力が必要不可欠であり,患者に対しての声かけや患者情報を踏まえて検査を行うことが重要となる。特に肺機能検査は,患者と協力して行う検査であるため,声かけや検査説明の理解度により検査時間や検査結果に差が生じる。検査回数が増えるにつれて患者負担も増え,正確で良好な波形を取得することが困難になる。また手術前で心身ともに不安定な状態の患者に対しては,声かけ,患者対応も含めて配慮が必要な検査である。その心理的負担を軽減しながら,検査を実施することが求められる。そのため患者に対する配慮と,どの患者を選択するかという判断が難しい場面もあり,慎重に判断していかなければならない。実際,肺機能検査は見学の患者同意が得られず断られるケースが心電図に比べ多く見受けられる。患者の背景や状態に配慮し検査を進めることは,臨床検査技師としての基本的な姿勢であり,今後の指導においても,この点をしっかり踏まえる必要がある。 今回評価基準書が定められ,その記載に準じ実習を行っている施設が多いと思われる。しかし,その内容は細かく,基準の難易度が高いという意見もある。実際の学生に求められているレベルも高まってきているが,評価に苦慮する場合もある。養成施設,実習施設ともに協力し合いながら,学生を育成していくことも今後の課題と考える。 今後実習生には実技のみならず,患者により添い医療従事者としての倫理的な観点からもアプローチし指導を行う必要性を感じる。参加型実習は,座学では得られない実際の症例や検査結果を出すことの難しさを理解する良い機会になると考える。 医療のニーズの増大や多様化から臨床検査技師に求められる役割は拡大している。そのため検査室内だけでなく,チーム医療において臨床検査技師として他職種との連携やコミュニケーションがより一層重要となる。今回のガイドライン改訂に伴う参加型実習で,患者に触れ合う機会が増えることは,学内実習では学ぶことができない貴重な経験となる。臨地実習を通して,臨床での臨床検査技師としての医療への関わり方,正確な検査結果を出すことの重要性,また検査結果に対する責任を肌で感じ取り,臨床現場で活躍する人材が育成されることを期待する。参考文献東京都医学検査 Vol. 53 No. 2

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