東京都臨床検査53巻2号_2
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Ⅱ.ビリルビンて体内の鉄過剰,炎症,組織障害があります。例えば,輸血後鉄過剰症の診療参照ガイド令和4年度改定版では,血清フェリチン1000 ng/mL以上が鉄キレート療法開始の判断基準として採用されています。イアトロ® フェリチンは,自動分析装置にて血清または血漿中のフェリチンを測定できます。新たに発売したキャリブレーターにより測定範囲下限値は5 ng/mLのままで上限値を従来の1000 ng/mLから2200 ng/mLへ拡大でき(図1),高値病態検体などでのレンジオーバーによる再測定率を低減しランニングコストの削減,T.A.T.の短縮に繋がります。 赤血球中のヘモグロビンの分解産物であるビリルビンは黄色の色素で,黄疸で血中濃度が上昇します。脾臓でヘモグロビンが分解されると疎水性の非抱合型ビリルビンが生成され,アルブミンと弱く結合して血中を移動します。肝臓へ移動した非抱合型ビリルビンはグルクロン酸抱合を受けると親水性の抱合型ビリルビンとなり,胆汁成分として胆管から腸管へ排泄されます。しかし,胆管閉塞などでは抱合型ビリルビンが血中に逆流し,アルブミンと共有結合するとデルタ(δ)ビリルビンとなります。このように血中ビリルビンには複数の分子形態があります(図2)。 イアトロLQⓇ T-BILII をはじめとするT-BIL試東京都医学検査 Vol. 53 No. 2 『鉄動態とそのマーカーについて~フェリチンを中心に~』Ⅰ.鉄代謝関連マーカー155■開催日:2024年9月17日(火)■講 師:PHC株式会社 診断薬事業部 学術部 平野 佑樹■生涯教育点数:専門―20点 赤血球のヘモグロビンの構成元素である鉄は,血中ではトランスフェリン(Tf)に結合して存在しており血清鉄と呼ばれています。不飽和鉄結合能(UIBC)は血中のTfがどの程度鉄と結合できるかを示す指標で,鉄と結合していないTfを間接的に測定します。血清鉄とUIBCの和である総鉄結合能(TIBC)は血中Tfの総量の指標で,鉄欠乏により高値を示します。フェリチンは鉄貯蔵を担う蛋白質であり,肝臓などに存在しています。老朽化したヘモグロビンは脾臓で破壊され,再利用される鉄は肝臓などのフェリチンに貯蔵されます。フェリチンの合成は鉄によって促進されるため,鉄欠乏の指標として重要視されています。鉄剤の適正使用による貧血治療指針改訂[第3版]では,鉄欠乏性貧血の診断基準としてTIBC高値(≧360 μg/dL)と血清フェリチン低値(<12  ng/mL)が用いられています。特に,血清フェリチンは鉄欠乏状態で早期に血中濃度が低下します。 一方,血中フェリチン高値となる主な原因とし図1 イアトロ フェリチンの基本性能

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