東京都臨床検査53巻2号_2
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‌い東京都医学検査 Vol. 53 No. 2■開催日:2024年9月13日(金)■講 師:‌‌東京慈恵会医科大学附属第三病院‌中央検査部阿部 正樹■生涯教育点数:基礎―20点 現在の検体検査は検体の集約化や合理化,さらに技術進歩もあり,ほとんどの施設で免疫検査と臨床化学検査が同一検査室で測定されている。また2018年の医療法改定や,ISO15189の要求事項においては精度管理の適切な実施が求められている。この適切な精度管理の実施に当たって,免疫検査には試薬や専用管理試料が高価であることに加え,管理限界が明確でないことや,試薬のLot間差など生化学検査とは異なる問題点がある。また,外部精度管理おいても方法間変動が大きいことや配布試料の反応性などの問題がある。 今回は免疫検査のデータ管理というテーマで臨床化学検査と免疫検査の相違点の理解から始め,免疫検査の精度管理を行ううえでの注意点について解説したい。 本現象は免疫検査が生物学的な抗原抗体反応によるところによる。抗原抗体反応の測定系には生物由来の免疫グロブリンが抗体として用いられており,近年はバイオテクノロジー技術の進歩により高力価の抗体を大量に作成することが可能となったことから,定量検査値の安定性は増している。しかし化学反応を利用した臨床化学定量検査と比較してその反応過程が一様でないことや,そのため多点検量線を必要とすること,さらに試薬のLot間差が生じやすいことなどにより最終的な158『免疫検査のデータ管理について ―臨床化学検査との相違点をふまえて―』Ⅰ.‌‌免疫検査は臨床化学検査に比べて測定値にバラツキが生じやすいⅡ.‌‌免疫検査では計測物質量が少ないことを理解するⅢ.‌‌臨床化学検査に比べて測定法間差が大き定量値のバラツキとなって表れることがある。特に汎用機用試薬について比較してみると免疫検査用試薬は抗体の選定,ラテックスの選定,抗体結合方法の選定,ラテックス粒径の選択,増感剤の選択,非特異反応物質の抑制など試薬完成までの過程が多く,それ故に測定結果に影響を及ぼすファクターも多いと言える1)。 専用機を用いた免疫検査では標識反応を利用した測定方法が主流となっている。これはその血中濃度が微量であるため,高感度な測定方法を必要とすることによる。具体的な例としてFT4とアルブミンは,同様の数値を示してもng/dLとg/dLと濃度単位が異なる。この単位の相違は109倍濃度が異なることを示しており,そのため反応の場に関わる外的要因による影響も受けやすく,機器や試薬の状態も結果に影響を及ぼしやすい。このように免疫検査では微量の物質を測定しているという認識が必要であり,バラツキの要因のひとつである。 免疫検査では測定対象物質ならびに試薬の多様性を理解する必要がある。測定物質については,CA19-9など多様な分子量分布をもつ物質の存在,HBs抗体のようにサブクラス別の抗体の存在などがあり,一方の試薬については,CA19-9試薬の抗体の相違,TP抗体試薬における使用抗原の反応性の相違,CEAにおける遺伝子ファミリーとの反応性の相違などがある。また,数値項目であるHBs抗原におけるカットオフ値設定の考え方などは標準偏差を用いておらず,臨床化学検査項免疫血清検査研究班研修会―要旨

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