■開催日:2024年10月23日(水)■講 師:慶應義塾大学病院石澤 毅士■生涯教育点数:専門―20点 尿検査の中で一般検査は,主に尿定性検査や尿沈渣検査が実施されるが,一般検査に携わる技師が腎機能検査や尿細管障害マーカーに関する知識を得ることで,病態の推定精度が向上する。その結果,臨床に有用な情報を提供でき,データチェックの精度が高まる。 本稿では一般検査に携わる技師に必要な腎機能検査および腎バイオマーカーについて解説する。1)GFRとは GFRは単位時間当たりに腎臓の糸球体で濾過される血漿の量を示し,腎機能の基本的な指標として用いられている。2)血液生化学検査a.クレアチニン(Cr) クレアチンの最終代謝産物であり,筋肉で産生される。腎糸球体で濾過された後,尿細管ではほとんど再吸収されずに尿中に排泄される。ただし,イヌリンとは異なり尿細管からわずかに分泌される。GFRが低下すると血清中濃度が増加し,GFRを推定するために広く用いられているが,筋肉量の影響を受ける。b.尿素窒素(UN) 尿素は摂取した蛋白質や組織の分解産物であり,腎糸球体で濾過された後,約50%が尿細管で再吸収され,残りが尿中に排泄される。糸球体濾過能低下で上昇するが,高蛋白食や消化管出血など腎外因性の影響も受けるため,解釈には注意178東京都医学検査 Vol. 53 No. 2 『⼀般検査業務で必要な腎機能検査と腎バイオマーカーの基礎知識』Ⅰ.はじめにⅡ.糸球体濾過量(glomerularfiltrationrate;GFR)と関連する検査ⅲ.クリアランス検査(GFRの実測)Ⅳ.GFR推算式(日本人のGFR推算式;JSNeGFR)が必要である。c.シスタチンC 全身の有核細胞で産生される分子量13,000の低分子蛋白である。腎糸球体で濾過された後,近位尿細管で再吸収・分解され,GFR低下により血中濃度が増加するため,クレアチニン同様GFR推定に用いられる。クレアチニンと異なり,筋肉量や年齢の影響を受けにくく,軽度のGFR低下を鋭敏に検出できる。 GFRの測定には,イヌリンクリアランスやクレアチニンクリアランスが用いられる。a.イヌリンクリアランス(inulin clearance;Cin) GFRの基準測定法はイヌリンを用いたCinである。イヌリンは,生体内で代謝されず,腎糸球体で濾過された後,尿細管で分泌や再吸収もされないため,正確なGFRの測定が可能である。b.クレアチニンクリアランス(Creatinine clearance;Ccr) Cinの測定は,イヌリンの持続静注や頻回の採血・採尿が必要であり,煩雑である。そのため,24時間蓄尿によるCcrが代替として用いられる。ただし,クレアチニンは尿細管から一部分泌されるため,CcrはGFRより高値を示す。蓄尿の手技が煩雑で,正確に行わなければ測定値の信頼性が低下する。 日常診療ではGFRの指標として,下記の推算式が広く用いられる。 (s-Cre:血清クレアチニン濃度,s-Cys-C:血清シスタチンC濃度,Age:年齢) ①血清クレアチニンを用いる式 JSN eGFRcr=194×s-Cre-1.094×Age-0.287(女性は×0.739) ②血清シスタチンCを用いる式
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