199■開催日:2024年10月31日(木)■講 師:東京都済生会中央病院金田 智■生涯教育点数:専門―20点 よく聞かれるものとしては,「見落としのない検査をするコツ」,「時間短縮のコツ」,その他「CT/MRIで指摘された病変を描出するコツ」,「適切な診断・評価をするコツ」などがあるが,最も重要なのは「見落としのない検査をするコツ」である。 超音波検査,CT,MRIはいずれも生体の断面像を得る検査であるが,利用している物理現象が異なるため,疾患によって各々診断できるものとできないものがある。胆汁とX線吸収値の差がない胆石はCTでは診断できないが,超音波検査では容易に診断できる。またMRIは石灰化が認識できないため,膵石で主膵管が閉塞していても診断できないことがある。CTは放射線被曝がありまったく無侵襲ではないし,単純CTは腫瘍と正常組織のコントラストがつかず,造影CT,たとえダイナミックCTであってもタイミングが合わないと診断の困難なことがある。特に小病変の診断が不可能であることが多い。またMRI検査はペースメーカー挿入者や人工内耳装着者,閉所恐怖症のものでは容易にスクリーニング検査に使うことができない。これらの点でスクリーニングに適した画像診断は腹部エコーしかないといえる。 超音波検査で見落としのない適切なスクリーニング検査を行うこと,超音波検査で発見した病変の精査の要否を適切に判断していくことが求められている。3.病変の見落としか検査の限界か?4.臓器別見落としのない検査のコツ『Dr.金田の腹部エコー 検査のコツ教えます!』1.腹部超音波検査のコツって?2.超音波検査とCT,MRIどれが腹部臓器のスクリーニングに適している? 病変の存在する部位を描出していない場合。技術的に不可能であれば検査の限界と判断されるが,技術的に可能であれば描出法を修正しなくてはならない。病変部を描出しているにもかかわらず病変を認識できない場合も検査の限界と考えられるが,病変が描出されているにもかかわらず見落とすこともある。スキャンスピードや集中力のコントロールを修正しなくてはならない。 まず見落としをしやすい部位を認識することが重要である。1)肝 端の病変。左葉外側区域の端や右葉横隔膜ドーム下,右葉の下縁や外側縁などで見落としが多い。仰臥位で右肋骨弓下走査を行うと,大腸肝湾曲のガスが邪魔して肝の観察が困難となることがあるが,この場合は早めに左下側臥位にするとよい。肝自体によって大腸肝湾曲のガスが足側におされるため,観察しやすくなる。このテクニックは時間短縮のコツとして重要である。2)胆嚢 底部と頚部。底部は多重反射に病変がうずもれて認識できないことが多い。多重反射は皮膚面に垂直にプローブを当てた場合に生じやすいため,皮膚面に斜めにプローブを当てることが基本のテクニックである。長軸像と短軸像の両方で描出することは,自然に斜めにプローブを当てることになることが多く,推奨される。また体位変換は病変の可動性の評価に必須の手法であり,スクリーニング検査に体位変換を取り入れる必要がある。3)膵 頭下部と尾部の病変を見落とし易い。膵頭下部は見落とし易いことを認識して,きちんと確認しに行くことを心がけることが大切である。膵尾部東京都医学検査 Vol. 53 No. 2
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