東京都臨床検査53巻2号_2
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図1a 肝左葉図1b 胃ガスは経脾的なアプローチと右下側臥位での左肋骨弓下横断走査が最も有効なテクニックである。 肥満者の膵の描出が苦手の方も多いと思うが,肥満者の膵体部を描出するコツは,消化管ガスが見えてもそのさらに尾側までプローブを振ることである。肝左葉外側区域が描出されて(図1a),さらにプローブを足側にずらしていくと胃のガス描出される(図1b)。そのさらに足側までプローブを振ると体部がようやく見えてくる(図1c)。時に横行結腸ガスよりさらに足側に描出されることがある。これは肝左葉と胃・横行結腸,膵体部の位置関係が肥満者と通常体型者,痩身者で異なるためである。それでも膵が認識しにくいときは,臍上部付近で縦断走査とし,上腸間膜静脈が体表に向かって上がってくるところを描出すると上腸間膜静脈背側に膵鈎部が描出されるので,膵頭部を見つけやすい(図2)。200東京都医学検査 Vol. 53 No. 2図1c 膵体部(⇐)図2 上腸間膜静脈縦断像で膵頭部を探すSMV腹側に膵頸部(←),背側に膵鈎部(⇐)が高エコーに描出されている。4)腎 上極病変や内側の病変を見落とし易い。また腹側に突出する病変などもしばしば見落とされる。縦断走査と横断走査で端を認識しながら検査することが重要である。特に左腎は体位で描出されたり,されなかったりすることがあるため,仰臥位と右下側臥位で縦断像,横断像を描出することが重要である。 腹部超音波スクリーニング検査では,つぎのような観点から体位変換を導入すべきである。臓器の体位変換による可動性を利用し,肝病変の見落としを減らすことができる。胆嚢病変の可動性確認のために体位変換を組み入れたルーチン検査法が必要である。膵の描出を向上させるためには,5.スクリーニング検査に体位変換を

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