tion<70ms),鋭波(sharp wave:70~200 複合(spike and wave complex)などを発作間欠期てんかん性放電(Interictal epileptiform discharge:IED)と呼ぶ。IEDは①背景活動から突出 ②陰性のピークを持つ ③陰性ピークの先端が鋭い ④立ち上がりが下りよりも急峻 ⑤下りの陽性の谷は基線よりも深い ⑥duration≦200ms ⑦徐波成分が後続する ⑧生理学的な広がりを持つ,といった特徴を呈す。通常の脳波検査において得られる所見のほとんどがこの発作間欠期(=発作時ではない)であり,てんかん発作時とは別物と考える。当然,IEDと比べ発作時脳波所見のほうが診断的価値は高い。 てんかん発作時脳波の特徴は①臨床発作・症状を伴う ②突然始まり,突然終わる ③律動的・周期的な活動がみられ,背景活動は抑制される ④波形は伸展パターンを呈す(周波数,振幅,分布,波形形態の変化),と表現される。実際には臨床症状を伴わない脳波上の発作Subclinical sei-zureも存在するが,④の進展パターンは発作時脳波を判読するうえでの大きなポイントとなるため,ぜひ覚えておいて頂きたい。ただし,若年性ミオクロニーてんかんと欠神てんかんでは発作時と発作間欠期の脳波所見が同一のため,鑑別には臨床症状の確認がポイントとなる。 てんかんは大脳の神経細胞の過剰興奮が原因であることから,臨床症状は異常活動が起こる大脳機能局在によって異なる。この発作型の分類は診断だけでなく,検査や適切な治療の選択のためにも重要である。 てんかん発作型分類はもともと1981年国際抗てんかん連盟(International League Against Epilepsy,ILAE)による国際分類が用いられてきた。しかし,2017年に同連盟から新しい発作型分類が提案され,現在は新分類が広く用いられている。詳細は参考資料2)を参照されたい。なお,日本語版は日本てんかん学会ホームページに掲載されている。旧分類では意識減損の有無で区別し■開催日:2024年11月13日(水)■講 師:東北大学病院浅黄 優■生涯教育点数:専門―20点 てんかんとは①24時間以上の間隔で2回以上の非誘発性(または反射性)発作が生じる ②1回の非誘発性(または反射性)発作が生じ,その後10年間にわたる発作再発率が2回の非誘発性発作後の一般的なリスク(60%以上)と同程度である ③てんかん症候群と診断されている,のいずれかの状態と定義される。従来は24時間以上の間隔で生じた2回の非誘発性発作と定義されていたが,2014年以降,再発リスクが60%以上ある場合は1回の発作でもてんかんの診断がなされるようになった。大脳の錐体細胞の過剰興奮によって引き起こされる慢性の脳の病気であること,反復することが特徴で,有病率が0.5~1%に達する比較的頻度の高い神経疾患である。決して,けいれん=てんかんではなく,意識消失=てんかんでもない。 てんかんを診断するためには詳細な病歴聴取,脳波検査(睡眠賦活含む),画像検査,神経生理検査が行われる。特に発作の情報収集は必須であり,患者だけでなく発作目撃者からも聴取する。初回発作では脳波検査の施行が推奨されるものの「脳波でてんかん性異常所見が見られないため,てんかんではない」は誤った認識である。1回の脳波検査で所見が得られるのは約50%,複数回検査を施行したとしても80~90%に留まる。焦点起始が深部や局所の場合,頭皮上では(発作時でも)脳波変化を捉えられない場合もある。 てんかん性異常波のうち,棘波(spike:dura-ms),多棘波(polyspike:≧spike×3),棘徐波202東京都医学検査 Vol. 53 No. 2 3.てんかん発作型分類『たかが発作時対応,されど発作時対応』1.てんかんとは?2.てんかんの脳波1)
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