ていた単純部分発作Simple partial seizure:SPS,複雑部分発作Complex partial seizure:CPSは,焦点意識保持発作Focal aware sei-zure:FAS,焦点意識減損発作Focal impaired awareness seizure:FIASと変更され,二次性全般発作,いわゆる焦点発作から全身けいれんに移行するものは焦点起始両側強直間代発作と改訂されている。 また,発作焦点が左右どちらの大脳半球に存在するかを示唆する症状を側方徴候3)と呼ぶ。例えば,前頭葉てんかんにおける4の字徴候や側頭葉てんかんにおけるジストニー肢位などが有名である。発作時徴候から発作後徴候まで既に多数の症状が知られているが,中には単一の症状であっても発作開始直後に認められた場合と終盤に認められた場合とでは焦点の考え方が異なるものが存在する。てんかん発作は発作起始のみならず,異常活動が伝播した先の症状を認めることや時間経過とともに変化することを念頭に入れておかねばならない。 脳波検査中に発作に遭遇した場合「あかふじ」に則って対応し,患者の安全性を確保したうえで記録は続行する。 あ:安全確保 か:カメラに映るように ふ:布団は剥ぐ,なるべく全身を映す じ:実況中継 発作時に最優先すべきは患者の安全である。転倒転落,外傷,自傷や器物破損,絞扼などの様々なリスクが存在する。事前対策としてベッド柵や緊急ボタン(応援要請)の設置,危険物となり得るものは近くに置かないといった環境整備のほか,発作対応時には胸ポケットからボールペンやハサミ等は取り除いておいたほうが良い。 加えて,てんかん診断における発作症状や発作時脳波は非常に重要な情報のため,可能な限り記録に残すよう努める。患者の全身が映るようにカメラを調整し,かつ布団などの障害物があれば取り除く。さらにカメラに映りにくい小さな変化(例えば,眼球偏位や口部のぴくつき,開閉眼の有無など)は目視で確認し,声に出して映像内の音声に残しておくと良い。なお,実況中継では見たままをそのまま表現するようにし,大発作や小発作といった言葉は使用しない。 本講演で最も伝えたいのが「あかふじ+α」である。脳波検査に携わる検査技師にはぜひ「あかふじ」に+αを求めたい。+αは発作中のタスクの実施を指す。 発作中,技師からの問いかけに反応がなかった場合,それだけで意識減損ありとは判断出来ない。意識はあり返事をしたい気持ちはあったが言葉が出てこなかった,意識はあり何か言われていることは認識していたものの言葉が理解出来なかった,意識がなかった,など複数の可能性を考慮しなければならない。 例えば,発作に遭遇した場合,患者に物を見せて覚えておくように指示をする(記憶タスク)。発作終了後に本人への聞き取りの中で覚えてもらったものを訊きだす。その結果,覚えていれば,問いかけに無反応であったとしても意識減損なしと判断出来るし,覚えていないのであれば意識減損ありと評価出来る。このように発作をただ観察しているだけでは正確に捉えられない症状が存在するため,発作中はタスクをかけることが重要である。当院では参考文献4)を参考に,発作時対応マニュアル(図:赤・青・黄)を作成し,発作に遭遇した場合に備えている(図)。 ちなみに発作時対応の大原則は「患者に対して無理やりなことはしない」である。押さえつける,持ってる物を取り上げる,口に物を入れるといったことはしてはならない。 万が一,脳波電極装着前に発作が起きてしまった場合には①安全確保のうえで ②可能であれば映像だけでも残し ③タスクを実施して発作時の情報収集に努めたい。 私見にはなるが,発作時に頑張って電極装着す東京都医学検査 Vol. 53 No. 22034.てんかん発作時対応
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