東京都臨床検査53巻2号_2
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1) モノグラフ 臨床脳波を基礎から学ぶ人のために 第2版,日本臨床神経生理学会編集,診断と治療社,伝えるのも有用である。が,映像記録の最大のメリットはてんかん診療における最も重要な発作症状を臨床側が直接観察出来る点に尽きる。時間経過や異常活動の伝播によって症状が変化する様子も映像だと解りやすい。映像が記録出来る条件ならば,ぜひ残してほしい。 言うまでもなく,発作後は早急に電極装着し記録を開始する。発作直後は所見が得られる可能性は高い。また,発作後は必ず前兆の有無や発作の自覚,記憶タスクの施行が出来ていれば意識減損の有無などを確認する。特に本人の内観は聴取しなければ得られず,収集した内容は発作時の情報と併せて臨床側に伝える。 通常の脳波検査中にてんかん発作に遭遇することは稀である。しかし,遭遇した場合,その発作には確定診断の一助となる情報が最大限に含まれていることを覚えておいてほしい。観察だけでなく,現場に立ち会っている検査技師だからこそ可能な+α:タスクの実施によって,臨床に有益な情報の獲得に努めて頂きたく,本講演内容が参考になれば幸いである。参考資料図 べきか?の問いにはNOである。通常てんかん発作は数分以内に収まる。しかも発作時脳波はonsetが重要であり,時間経過とともに異常活動は伝播し進展していく。つまり,どれほど素早く付けたとしても電極装着が終わる頃には発作は終了しており,かつonsetの記録はほぼ不可能,もし記録出来たとしても成れの果てに過ぎない。そのため,電極未装着の場合は脳波よりも発作症状の記録を重視し,映像に残すことを優先している。さらにタスクが施行出来れば,より臨床的価値の高い情報になり,脳波がなくとも十分に診断の一助となり得る。これはてんかんは脳波で診断するものではないという大前提がある。なお,既にシステムリファレンス電極が装着済みの状況であれば,全ての電極が装着されていなくとも脳波記録を開始するのも一手である。記録しながら残りの電極装着を続けても良いが,装着を優先するあまりに発作症状を遮るような対応(例えば,左側に引っ張られるような症状を呈しているときに電極装着のために強引に右側を向かせる)や,気づかぬうちに患者とカメラの間に割り込んでしまい映像には技師の頭や背中しか映っていないというような最悪の状況に陥らないよう注意する。タスクをかけながら,無理のない範囲で装着を続けるのであれば問題ない。もちろん,発作症状を文章で204東京都医学検査 Vol. 53 No. 2

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