①高異型度漿液性癌(High-gradeserouscarci-noma)の原発巣はどこか。 漿液性癌…卵管上皮への分化を示す癌 低異型度low-grade:前駆病変として漿液性境界悪性腫瘍 高異型度high-grade:多くが卵管を原発とする。前駆病変は漿液性卵管上皮内癌(STIC:serous tubal intraepithelial carcinoma) p53 signature→STIL→STICへの進行が指摘されているが,p53 signatureはp53変異が存在するだけで,他のゲノム変異や染色体コピー数に異常はない。徐々にゲノム異常が蓄積し,STIL,STICへ進展する(20年以上かかるとも言われている)。②卵管の切り出し SEE-FIM法について リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)の際の卵管の病理検索はSEE-FIMプロトコールに準じることを条件付きで推奨している。 (SEE-FIMプロトコールを行うことで,STICの検出率,オカルト癌の診断率が上昇することは確図2 高異型度漿液性癌の際の原発巣の確認瘍で,組織発生的には子宮内膜症との関連が指摘されている。腺腫と境界悪性腫瘍の分類があり,悪性の場合には類内膜癌の亜型となる。④類内膜腫瘍 子宮内膜腺上皮類似の腫瘍細胞が増殖する。子宮内膜症と関連しているとされ,背景に子宮内膜症があることが多い。⑤明細胞腫瘍 淡明な細胞質の腫瘍細胞が主体となり増殖するが,その増殖様式は多彩である。漿液粘液性腫瘍や類内膜腫瘍と同様,子宮内膜症との関連が指摘されている。免疫組織化学染色では,ERが陰性,HNF1βが陽性となる例が多い。*類内膜癌や明細胞癌(類内膜癌の約46%,明細胞癌の約33%),一部の漿液粘液性境界悪性腫瘍では,ARID1A(the AT-rich interactive domain 1A[SWI-like])遺伝子の欠失があり,その場合,ARID1Aの免疫染色では陰性(欠失あり)となる。その他にも,胃癌や膀胱癌,胆道癌で言われている。216東京都医学検査 Vol. 53 No. 2Ⅲ.卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約病理編第2版に基づいて卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約病理編第2版より
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